分子栄養学を取り入れた食事と家族の協力について
がんと診断されると、心も体も大きなストレスを受けますよね。ご本人でなくご家族もまた、そのショックは大きいものです。治療を受けながら「どんな食事をしたらいいのだろう」「家族はどう支えたらいいのだろう」と不安になる方も多いと思います。手術が終わった後も続く闘病生活。体力回復はかなり重要な問題です。そんな中病院から出された食事を食べるだけ、でいいのでしょうか。また、退院後もどういう食事をすればいいのか、今回、分子栄養学という考え方を取り入れた食事と、ご家族の協力の大切さについて、私の経験からお伝えしたいと思います。
分子栄養学を使って
分子栄養学とは、食べ物に含まれる栄養素を「分子レベル」で考え、からだが本当に必要としている栄養をしっかり届けることを大切にする栄養学です。
「同じ食事をしても、人によって消化吸収や必要な量はちがう」という考えが基本になっています。つまり、あなたのからだに合わせた栄養のとり方を考えていくのです。
がんの治療中に大切な栄養のポイント
がんの治療は、手術・抗がん剤・放射線などいろいろあります。その中で食事に気をつけたいポイントを、分子栄養学の視点からご紹介します。
① タンパク質をしっかりとる
からだの修復や免疫の働きに欠かせないのがタンパク質です。お肉や魚、卵、大豆製品などを毎食意識してとりましょう。食欲がないときは、ペプチドだし+卵のスープや豆腐など消化の良いものからでも大丈夫です。
② ビタミン・ミネラルを忘れずに
抗がん剤や放射線治療では、体の中で活性酸素が増え、細胞がストレスを受けやすくなります。そこで大切なのが抗酸化作用のある栄養素です。
- ビタミンC(野菜や果物に含まれますが果物は分子栄養学では推奨しないことが多いです)
- ビタミンE(ナッツや植物油)
- セレン(魚介類)
これらは細胞を守るお手伝いをしてくれます。
③ 血糖値を安定させる
甘いものや白いご飯、パンをとりすぎると血糖値が大きく上がり、体に負担がかかります。食べ順を徹底したり、必要最低限の主食にする、食前に酢をとることで、血糖値の急な上昇を防ぐことができます。
④ 腸内環境を整える
腸は「第二の脳」と呼ばれるほど、免疫と深い関わりがあります。発酵食品(納豆・キムチなど)や食物繊維(野菜・海藻・きのこなど)を毎日の食事に取り入れましょう。
食事を楽しむ工夫
治療中は、味覚の変化や吐き気、口内炎などで食事がつらくなることもあります。そんなときは無理に「体にいいから食べなきゃ」と思う必要はありません。
- 匂いが気になるときは、冷まして食べる
- 水分はスープやゼリー、水に溶かすタイプのサプリメントなどを利用してとる
- 少量を何回かに分けて食べる
- 好きな食材をアレンジして楽しむ
「楽しく食べられること」が一番の栄養になります。そしてがんの闘病は、患者さん一人だけの戦いではありません。家族の支えがとても大きな力になります。
食事の場面でできること
- 「これなら食べられる?」と一緒にメニューを考える
- 無理に食べさせようとせず、本人のペースを尊重する
- 料理を小分けにして冷凍しておき、食べたいときにすぐ用意できるようにする
- カロリー摂取を重要視する(MCTオイルなどの活用も有効)
気持ちの支えとして
食事の時間を「がんばる時間」ではなく「一緒に楽しむ時間」にすることを工夫してはいかがでしょうか。会話や笑顔が、何よりの栄養になります。ご本人の食欲が湧くものを優先してあげることも食を楽しむコツになりますね!
まとめ
がんの闘病中、食事は「体を治すための栄養」であると同時に、「心を支える時間」でもあります。分子栄養学の考え方を取り入れると、カロリーを摂取しつつ「あなたに合った栄養」を意識することができます。
そして、それを支えるのはご家族の存在です。患者さんが「食べられる喜び」を感じられるように、無理なく続けられる工夫を一緒に考えていきましょう。私たち分子栄養学を学んだ管理栄養士がお手伝いをします。
あなたとご家族の毎日の食卓が、少しでも安心できる時間になりますように。